さて、2回にわたってお送りしたこのシリーズも早くも3話目。ここからはちょっと趣向を変えます。なお、この物語はすべてフィクション…かも知れないし、登場する人物、団体等は全て架空のもの、かも知れません…です。
Rの場合
Rは朝高卒業後、朝銀を2年務めた後、時流に乗り小さな不動産会社を設立。青年実業家として、大胆ながらも堅実な経営努力を重ね、バブル期にも浮かれる事なく、地に足をつけた会社経営で着実に業績を伸ばした。その後バブル崩壊、リーマンショック等の経済危機の時も、소조で鍛えた持ち前の粘りで何とか持ち堪え、現在も堅実に商いを行なっている。もちろん一時に比べたら規模も小さくなったが、それでもそれなりの事業成績を挙げている。
家族はRを入れて5人。妻は同じ中学の4つ下の後輩。モーレツなアタックを受けて、3年間交際ののち28の時結婚した。子供は長女、長男、次男の3人で長女は結婚して横浜に住み、長男は同じ会社で副社長、次男は年が離れて高3で来年は受験と言う事になる。
長女は高校までウリハッキョを卒業したが、長男、次男は高校から日本の高校に通わせた。彼なりの考えからではあるが、周りとの微妙な空気の変化から、同胞達とは段々と疎遠になって、今では殆ど付き合いは無くなった。
そんな時、思いも寄らずかつて仲の良かった友達から電話が入った。
「もしもし?」「もしもし、R?久しぶり。俺、Tだよ」「おー、久しぶり。どうしたの?」
しばらく他愛も無い話題が続いた後で、「うん、実はさ…今年の11月9日に上野の東天紅で高校の還暦同窓会をやる事になったんだ。それでRも参加して欲しくてさ、電話したんだ。」「…うん、わかった。でも、まだ先の話だし、予定もわからないから…」「まだ時間あるから調整してさ、参加しろよ。^_^じゃな。」
(同窓会か…)
Rは学生時代からいわゆる、モテる男だった。顔も整って背も高い、運動も得意でクラブ(ラグビー)でも花形だった。自然と女の子からの声援も多いしファンクラブまであった程だ。だが世の一般のモテ男にありがちな、いわゆるプレイボーイではなかった。
高1の時に付き合い始めた◯スンとの仲は高校時代ずっと続いた。卒業後、彼女は大学に進学、すれ違いが続きうやむやの内に別れたが、Rはずっと後悔していた。(あ、もしかしたら◯スンと会えるかも知れないな。でも…)会って何を話そう?気まずい思いだけが残るんじゃないか?それと…
もう一つ、Rには二の足を踏むものがある。それは…
K子の場合
K子は朝高卒業後短大へ進学。商工会に就職後花嫁修業のため退職、家事を手伝いながらお見合いを重ねる事ン十回!なかば諦めかけた時に、降って湧いたような岡山県の人との縁談…広島朝高卒業生の4つ上の人と見事ゴールイン!28歳の春を迎えた。
現在子供は4人。家業の焼き肉店を夫婦でやり繰りしながら、それなりに幸せな家庭を築いている。
ただ、地方に嫁いだ為に高校の同級生とは疎遠になった。元々活発な性格ではなく、控えめで笑い声もあまり上げないK子なので積極的に連絡を取る事も無かった。結婚当初は度々連絡を取り合った友達も、子供が出来、育児に時間を取られ、連絡も途絶えて行った。
日々の生活に追われ、あくせく働いて来たK子も、気が付いたらもう還暦前…4人の子供も手を離れ、夫婦水入らずの生活を過ごしていた。
(このまま私の人生も終わるのかな?ま、悪くない人生だったけど…)と思ってた矢先に一本の電話が鳴った。
「もしもし?」「もしもし?K子?私。Mリよ。久しぶり、元気?」
「Mリ?…」瞬間誰だか解らなかった。でも、遠い記憶の中で聴き馴染んだ声と、Mリと言う名前…記憶を呼び戻すのにさほどの時間はかからなかった。「あ、Mリ?久しぶり〜!」思わず声が弾んだ。横にいたナンピョンは驚いた顔で見ている。
「どうしたの?」「うん、あのね、今年は還暦の年じゃない。それでね…」「やだ〜、還暦還暦言わないでよ。哀しくなるから…ははは」「本当だね、それでね、還暦を迎えて東京朝高の同窓会をやろうって事になったの」「!…へぇ…同窓会ねぇ」「うん、そう。今年の11月9日に上野の東天紅で…それで、K子も是非参加して欲しいなと思って連絡したの。来れるでしょ?」
「う〜ん…お店やってるし、東京は遠いいな〜…行きたいけどね…」「まだ時間あるからゆっくり考えてみて。皆んな会いたがってるよ。それじゃね」と電話は切れた。
(同窓会か〜…やっぱり無理かな?お店もあるし、家の事もあるし…)フゥーと溜息をついて立ち上がった。
その様子を見てた旦那さんが「なんの電話?」と聞いて来た。「なんか、還暦の同窓会を東京でするらしいのよ。それの勧誘。でも行かない。お店もあるし、何より遠いもん。電車賃も高いしね…」
「…」
ついて来れたら、つづく…